肩のスポーツ障害
1、野球肩(投球障害)
肩の関節は可動性(動き)に富んでいますが一方で構造的に安定感が乏しいです。肩の関節は肩周りの筋肉や靭帯、腱といったもので支えあられているだけだからです。
野球肩(投球障害)とは投球動作時に肩の痛みや違和感があり、思うようにボールを投げられなく肩の障害の総称です。肩の障害の種類は沢山あります。
原因はオーバーユース(使い過ぎ)による疲労の蓄積や筋力不足による負担、
フォームの乱れや技術不足による不適切な投球動作が原因となっています。
※ちなみに野球だけに限らず、ピッチングと似た動作を伴うバレーボールのアタックやテニスのサーブなどでも同様の障害が起こることがあります。
肩の障害は細かく分類すると主に下記のようなものがあります。
●肩板損傷
●肩板炎
●関節唇損傷
●上腕二頭筋長頭炎・長頭腱剥離
●上腕三頭筋長頭腱炎・長頭腱剥離
●棘下筋腱炎
●インピンジメント症候群
など多彩な症状があり、これらの症状が一つだけではなく複合して起こっている場合もあります。
インピンジメント症候群は水泳選手でも見受けられます。
【損傷箇所の判断】
野球のピッチングフォームは動作を4段階に分けることが出来ます。そのどの段階で痛みが起きるのか、痛みのある投球の状態によって損傷箇所が判別出来ます。
それでは投球動作を4つに分解してそれぞれ見ていきましょう。
①ワインドアップ期
投球動作開始からボールがグラブの中に納まっている時期で膝を高く上げる段階まで。 ※この時期では肩の障害は起こらない。
②コッキング期
ワインドアップ期に続いてグラブから手が離れ、肩がトップポジションになるまでを言います。前足が地面に着くまでを(アーリーコッキング)と言い、その後を(レイトコッキング)と言います。特にレイトコッキングの際に、肩が前方にズレようとするために様々な筋肉に大きな負担が掛かったり、肩の不安定性などを引き起こしやすくなります。
③アクセレーション期
コッキング期に続き、肩が急激に内転・内旋(腕がねじれて投げ下ろす状態)されてボールが手から離れるまでを言います。ここでは、関節がより大きな不安定性を生じ、腱板や滑液包に炎症が起こり痛め易くなります。
④フォロースルー期
ボールが手から離れ、投球動作が終了するまでを言います。
ここでは急激な減速が肩にかかるために、肩から背部の肩甲骨周辺の筋肉や関節の背中側に大きな負荷がかかり、炎症や肩の不安定性が起こりやすくなります。
肘のスポーツ障害
1、テニス肘・ゴルフ肘
テニスやゴルフなどのラケットやクラブのグリップを強く握るためには必然的に手首を背屈(手の甲側に反らす)を必要とする。握力が弱ければ手関節の伸筋群(手の甲側の面の筋)に負担がかかる。この状態が続いた場合には、この筋の付着部である外側上顆(肘の外側近くにある骨の出っ張り部分)に痛みが発生する。
これらにより、内側上顆炎・外側上顆炎・腱鞘炎・回内屈筋群筋膜炎などと呼ばれる障害が発生する。
2、野球肘
投球動作時の時のアクセレーション期(肩が急激に腕がねじれて投げ下ろす状態になり、その状態からボールが手を離れるまでを言います。)に肘の内側の出っ張りのある骨に付く筋肉や筋肉の先端にある腱、靭帯に無理に引っ張られる力が繰り返しかかり、炎症が起こり障害が発生する。そのため投球数が多ければ多いほどリスクは増えます。
内側上顆炎・離断性骨軟骨炎・陳旧性尺側側副靭帯炎などと呼ばれる障害を引き起こします。
膝のスポーツ障害
本来、膝の関節は屈曲と伸展とわずかな内旋・外旋(捻り)のみ可能なのですが、スポーツにおける膝関節の役割は歩く・走る以外に日常生活とはかけ離れた様々な動きがあります。跳ぶ・着地する・捻る・踏ん張るなどの動きが複雑に重なり大きなストレスがかかります。体重を常に支える関節ですので、スポーツを休ませるといっても日常生活の中だけでさえ膝には常にストレスがかかりますので、なかなか治りにくく長期化するものが多いことも特徴の一つです。
1、過労性軟部組織障害
ジャンパー膝といわれる膝蓋腱炎・腸脛靭帯炎・鵞足炎などの障害を指し成長期を過ぎた頃から多発します。また、成長期には特有の膝下の痛み(腿の前面の筋肉が付着している脛骨粗面といわれる部分が成長中で骨が柔らかいため、ハードなトレーニングで鍛えられた太腿前面の筋肉(大腿四頭筋)の収縮する強さに対応できずに出っ張ってくるオスグッド氏病と呼ばれる障害が多発します。ジャンパー膝や鵞足炎はバレーボールなどの跳躍系の競技に多く発生し腸脛靭帯炎は長距離走者に多いです。ほとんどの障害がオーバーユース(使い過ぎ)によるがジャンパー膝は膝のお皿(膝蓋骨)の柔軟性や太腿の前側の筋肉(大腿四頭筋)の緊張・硬化が背景にある場合が多く、鵞足炎は脛骨の外旋(外側にねじれる)が、腸脛靭帯炎は脛骨(すねの内側の太い骨)の内旋(内側にねじれる)の状態が長期に繰り返されると痛みとして障害が発生します。
腰背部のスポーツ障害
腰は各種のスポーツにおいて運動の中心軸となるために腰の周辺の骨・筋・筋膜・靭帯・椎間板などは、常に大きなストレスを受けています。
ですから結果的には多くのスポーツ選手が急性・または慢性的に腰へ様々な痛みを生じることが多いものです。
腰痛を引き起こす主なスポーツ外傷・障害
1、急性腰痛症(スポーツ外傷)〜いわゆるギックリ腰といわれるもの。
- 椎間関節や仙腸関節の捻挫
- 腰部筋や筋膜・靭帯等の部分断裂や損傷
- 椎間板ヘルニアなど・・・
2、慢性的な力や動作によっておこる腰痛症(スポーツ障害)〜原因は多種多様あります。
- 筋筋膜性腰痛症
- 脊椎分離・すべり症
- 椎間板症や椎間板ヘルニア
- 腰椎前弯増強による静力学的腰痛症
足、足首、下腿のスポーツ障害
走る・跳ぶという動作の伴う、激しいスポーツでは足のトラブルは付きものです。
足関節捻挫やオーバーユース(使いすぎ)による足底筋膜炎やアキレス腱炎といった障害が主に発生します。
1、足関節捻挫
足の関節の受傷時の状況に応じて内反捻挫と外反捻挫に分かれます。内反捻挫は足首の外側を内向きに捻ってしまう捻挫で、外反捻挫は足首の内側を外向きに捻ってしまう捻挫で前者の方が圧倒的に多い。後者は骨折を伴うことも多いです。
原因として足関節の運動に関与する筋群の筋力低下があります。
足関節の捻挫は受傷の程度によって?度〜?度に分けられる。
・?度:少しの腫れと圧痛(患部を押したときの痛み)がある。
・?度:(部分断裂)?度より腫れがひどく、足首の上げ下げができない。
・?度:(完全断裂)重度の腫れと内出血を生じ足を引きずる。
2、プロネーション(回内)症候群
プロネーション症候群とは足関節のプロネーション(回内)により引き起こされる障害の総称。後ろから見るとアキレス腱が外反(内側に傾く)しています。
この障害の原因は陳旧性の捻挫、腓骨筋・ヒラメ筋(ふくらはぎの後ろの筋肉)の短縮、過緊張、仙腸関節部(骨盤後面の関節)の固着化(カイロ用語でフィクセーション)、すねの筋肉(後脛骨筋・長腓骨筋)の筋力低下などがあげられます。
症状としては外反母趾、膝蓋骨(膝のお皿)のトラッキング(屈曲時)、坐骨神経様の痛み、腰痛、アキレス腱炎、腸脛靭帯炎、筋肉の緊張が発生しやすい。
3、アキレス腱障害と足底筋膜炎
足底筋膜炎とは着地時あるいは直立時の踵部内側の疼痛を特徴とする障害です。足底筋膜という足底の筋肉へのストレス(オーバーユース、柔軟性低下、足底筋の筋力低下、回内・回外足、ハイアーチなど)が原因である足部の関節の柔軟性が損なわれている場合が多いです。またアキレス腱の過緊張(短縮あるいは硬化)による二次的障害として発症する場合も多いです。これは腓腹筋およびヒラメ筋という下腿部の筋肉の機能不全のためにジャンプやランニングなどの着地時のショックが分散されにくくなり足底筋膜へのストレスが増加するためです。また、アキレス腱の硬化は中腰を強制されるスポーツ選手の腰痛の原因となるばかりか膝関節への負担も増大させます。
|